文系からCADオペレーター・機械設計技術者になりたい人が覚悟しておきたい現実
文系の学部に進学してしまったけどモノづくりに関わる仕事に就きたい人、転職探しでCADオペの存在を知って興味は持ったけど不安って人のために書きました。
本題に入る前に僕自身の簡単な自己紹介します。
【執筆者の簡単な経歴】
- 私立文系大卒
- CAD未経験から入社
- 機械部品図の派遣業務・請負業務の経験あり
- 製図知識は入社後の座学と実務で覚える
- 板金部品の図面担当
- 1年と数か月で退職
- 技術者派遣の会社勤務だった
上記のような経歴で以降の文章は書かれています。
文系が転職活動をする中で、未経験職に前向きな思いを寄せるのは大いに結構です。
ですが、あえて僕はネガティブな情報を多めにして書きます。
それでも気になる方は、最後まで読んでみてください。
文系が目指す会社
メーカーではなく、アウトソーシング系の会社での採用を目指しましょう。
アウトソーシング系って?
アウトソーシング系って、他社の仕事を引き受けて代わりにやっときますよっていう会社です。
取引先は主にメーカーさんです。
会社の立地場所によって、自動車関連なのか産業機械関連なのか、航空機関連や金型設計などの傾向が決まると思います。
それは面接で質問したりや求人票を読めば分かります。結果、求められる知識の傾向も使用するCADソフトも業界によって違います。僕は工作機械関連、CADはSolid Worksを使って働いていました。
メーカーに最初から入れないのか?
可能性はゼロではないにしても、未経験で工学部卒でもない人をエンジニアで雇う会社はほぼないです。それは一般的に知られているような大手メーカーの採用情報でも調べれば文系卒の人間を会社がエンジニアとして募集していないことが分かるはずです。
だから文系が機械設計エンジニアを目指すなら、技術者派遣会社に一度入るか工場で数年現場を学び経歴を作ってからのどちらかでしょう。なぜなら、文系にとってエンジニアとしての職場は、初めてのことだらけの世界になると思います。
工学部や工業高校卒、高専卒の人が応募する中で、会社が何故、あえて文系卒を採用する必要があると思いますか?
ないですね。
一からというより、ゼロから教えてあげなければいけない人をメーカーが望んで技術者として採用するはずがありません。使えるまでの費用が掛かりすぎです。
そもそも、使える人材かどうかが面接時に全く判断できない。
よって、文系はが目指すべき就職先は技術者派遣(アウトソーシング系の会社)です。工場で一度働いて、現場を知ってから転職活動で技術者派遣の会社へ行くのもありですが、時間が掛かります。それなら、現場方面で次も転職活動した方が、待遇が上がる可能性もあります。
覚悟しておくこと
ソフトウェアのプログラマーと違って文系が理系の機械系エンジニアを超えるようなエンジニアにはなれないです。会社もそれを求めてはいないでしょう。
機械工学の学位を修めていない人が重要で精密な部分の設計を任されるはずがありません。
完成品を購入する消費者側から考えても嫌じゃないですか?
自分が買う自動車のエンジンを文系が設計した車だと知ったら買いますか? 僕なら買いませんし、会社がそもそも任せないはずです。
じゃあ何で文系でもCADオペレーターの需要はあるのか?
僕の経験だと、メーカーは最終的な製図をする人と時間が自社の人だけでは足りないから外注しているという印象です。だからこそ、この手の求人は年中あるし、アウトソーシング系会社も一から研修で教えるから安心してくださいって言います。需要があるから募集をかけ続ける。しかし、メーカーの業績頼りな業界ですから、取引先のメーカーが潰れれば一緒に派遣元の会社の売り上げも大打撃を受けます。
研修は図面の書き方から
文系卒が最初に覚えること、それは製図です。
図面の書き方を知らなければ話になりません。文系から入社して機械工学の知識ゼロの人がいきなり機械設計技術者を名乗ることはありえませんし、仕事も振られません。まずは先輩の指示で簡単な部品図か図面修正あたりの仕事を任されます。
最初は手書きですね。CADソフトは、ちょっと図面について理解できたら触らせてもらえるはず。最初は手書きのことだけ。
仕事はCADソフトを使って製図をするので手描きなんて重要じゃないと思う人もいるかもしれないですが、仕事の相談や先輩に教えてもらうときは、ささっとフリーハンドで描いてしまった方が早いし便利です。
それから、3DCADだけで製図していると紙の図面(2D)から製品の構造をイメージするのが苦手になりやすいです。今は3Dモデルを一度作成してから平面の図面にするので紙をパッと見ても形が理解できない人は経験の浅い人には多い。だから手書きを学ぶことは今も大事ということですね。
ちなみに、手描きの簡易な絵をポンチ絵って言います。
あなたの周りにあるA4サイズの紙だって、紙に染み込んだインクの跡が違うだけでゴミにもなれば、世界中で使われる部品の図面にだってなります。紙に何が書かれるかによって、紙の価値が決まるんですね。僕は元上司に、うちの商品は図面だと言われたときは、こんな紙っきれがねぇって思ってました。僕が描いた図面もどこかで製品として使われていることでしょう。
自分がいた会社
CADオペというのは、パソコンで製造品の図面を描く仕事なんです。で僕がいた会社は、技術系アウトソーシングです。僕はそこのエンジニアとして入ります。
メーカーではないため、エンジニアは求められた図面を仕上げ、納品することでお金が受け取れるわけです。もちろん、自分の所属する会社が天引きをして自分の懐に入ります。図面は読めれば良いってわけでもなく、そういう会社にとっての商品は図面なんです。
図面(CADデータ)の作成であり、印刷した時に使える図面の提供ができて、会社としての存在意義が認められます。
機械の図面なんて、複雑な機械を作ろうとすればするほど、必要な図面枚数は部品の数だけ膨大になります。だから、1枚あたりの図面単価も下がります。と、いうことは、図面をたくさん描いて描いて描きまくっていく日々が、機械設計職に就く人には待っています。
A4なら一枚で30分も掛からないのも多いです。反対にA0サイズになるとある程度経験がある人が担当するような案件になります。
機械図面を一人で全て描くのは無理
現代の機械は、構造が複雑です。 それに比例して部品点数も増えます。だから、図面だけを描くCADオペと呼ばれる人も需要があります。機械工学を学んできた人だけでは、とても時間が足りない。だから製図知識があって、CADソフトも扱える人を集める。製図だけ任せれる人を安く集めて、できるエンジニアは設計・開発に集中する。仕事の分業が進み、文系もモノづくりの上流過程に近いほうもできるようになった。喜ぶべきかどうかはよく考えるべきです。
例えばですが、ガソリンで動く自動車1台が一体、何個の部品で構成されていると思いますか?100?1000?いや、もっと部品は多く必要で約3万点が組み合わさり出来ています。
この3万点の部品すべてには当然、図面が存在します。
1種類の自動車ができるのにこれだけの図面が必要なんですね。流用できる部品もかなりあるかもしれないですが、それでも新しく描かなければいけない図面って何パーセントあるんでしょう?言い換えれば、それだけモノづくりには人手が必要なのでCADオペとしての需要が今でもあるということです。
設計とは何かという答えを僕はまだ出せていない
文系から、という括りが職業に減ったのは事実なんでしょう。
それは専門職がより若くから専門性を身に着けた人にチャンスが集まり、遅れてきた人は前までの専門職だった部分に収まることが増えてきているからです。
あとは、道具の発達です。CADソフト然り、CAEソフト然り。足りない知識と経験をパソコンとソフトウェアが補ってくれてます。
3D CADなんてものが主流の時代、パソコンモニター上には、2D図面にするためのモデルを作り、それを2Dへ変換して寸法や注意などを入力します。これやってると、「あぁ、僕もエンジニアとしてちゃんと仕事してる」って思うこともありました。
でもしばらく働いて自分は勘違いをしていることに気付いた。
僕は指示された図面を仕上げることに精一杯で、自分が描いた図面が何の役割を果たす部品なのか知らなかった。成長したのはCADソフトの扱いばかりで、肝心の機械設計についての知識はあまり増えなかった。
同じ部署の先輩の中には5年、10年と製図のみの仕事をしている人が結構いた。
つまり、CADオペから機械設計士へとステップアップできている人がいなかった。
CADオペの仕事で嬉しかったこと
仕事ですから、嬉しいとか言って喜んでる場合ではないですが。
CADオペでも、自分が描いた図面には、自分の名前の記載をします。何か部品の欠陥や不具合があった時に、責任の所在を追うためです。何も問題ない部品なら、何も言われません。そもそもCADオペの仕事は製図だけですから、設計者に問題があります。
自分の書いた図面が、どこかの工場で部品の形に加工され、どこかで動いているはずなんです。これに関しては、部品工場で製造している人にとっての誇りでもあるでしょう。とはいっても、この世に機械部品の図面が一体どれだけあると思いますか?
機械設計には必須アイテム
機械設計便覧も買いました。読んでみて驚いたのは、規格というのはミリ以下の世界から決まっていて、自分が図面だけを書く前には当然、数式を用いた計算方法や物理学の知識などが求めれる高度な専門性ありきの職であること。
機械工学の教育を受けていない文系卒の僕は、高校生レベルの数学でも怪しい、物理学に至っては未修です。
そもそも、CADオペはエンジニアじゃないと思い知らされます。でも、文系からでも数年から10数年続けて、機械設計技術者になれれば、文系か理系かなんて関係ないです。医療系は文系が医療職に就くのは無理だとしても、モノづくりは文系でもチャンスがあるのは事実です。
文系からCADオペになって苦労したこと
なにが大変って、仕事のイメージがまずできない。
会話してても、現場作業者の視点からの意見とか工学部卒の人が学生時代にすでに習得した知識・経験、専門用語や現場用語などがゼロからの参加ですから。
分からなくて当然。でも、分かるようにならないと続けれません。仕事以外の時間を仕事時間に知らなくて悩む時間が減るように自己研鑽をして、理系卒の人より努力しなくてはいけないです。
努力してる間も、理系卒の人も学習しますから、その差を一生埋めれないかもしれない。あなたがどこまでエンジニアとして生きていくかも大事で、向き不向きは早く決めたほうがいい場合もあると思います。
派遣会社によって、同じ部署でも給料が違う
派遣として働く以上は覚悟する必要があります。
同じ部署で働いている同僚が別の派遣会社からの社員さんということは普通にあり得ます。
そうなると、仕事内容が同じでも、派遣会社から渡される給料は違ってきます。
同じ仕事内容、同じ時間だけ働いても、基本給の違いやボーナスの査定基準の違いによって年収にも同僚と差が開きます。
僕が務めていた会社は他社よりも安い契約金で派遣するというのがウリがだったので、他の派遣会社よりも給料が安かったです。
そして、長時間の残業をすることで派遣会社は売上を出すので、
「長時間残業 = 会社貢献度の高い良い社員」
という査定方式が完成します。
大手の派遣会社は法律をきちんと守ってくれる会社が多いので、大手の派遣会社に絞りましょう。あと、ネットの評判も大事です。僕は、やや悪く書かれていた中小の派遣会社に入り失敗しました。
ここまで読んで、また自分の適職がCADオペや機械設計エンジニアなのか分からなくなってしまった人も多いかもしれない。
いや、自分に向いているに違いないと思えた人はそのまま自分の信じる道で仕事を頑張ってください。
「あれ?やっぱ、違うかも?」と思った方、自分の得意不得意から適職を探すのを一旦辞めましょう。そして、自分の生活や内面を分析して適職になりそうなものを探してみてはどうでしょう?
僕の記事を読んでくれたあなたが、これから幸せな人生を送れますように。
ではっ!